のぶっつぁん

法務

写真はとある会館での葬儀
正面にご本尊を掛けて葬儀を執り行います
このとき儀礼の中心はご遺体ではなく、ご本尊なので、遺影で隠れたりせぬよう留意します。

拙寺ではこの「のぶっつぁん」をお迎えして葬儀を勤める風習がまだ残っています
「のぶっつぁん」・・・それは、お寺に用意された葬儀用のご本尊のこと。
「のぶつ(野仏)さま」がなまった表現です。

「のぶっつぁん」は拙寺本堂の余間に専用の桐箱に入れて安置されています。

ご門徒様のご往生の報があると、通夜の当日、親族のどなたかがお寺に「のぶっつぁん」預かりにみえます。
通常2名でお越しになります。1人は運転手、あと1人がご本尊の拝受をします。
式場に持ち帰り、このご本尊を掛け、通夜、葬儀を営むのです。
ただ会館での葬儀が当たり前になって20年あまり、ごの風習が伝えられていない場面にしばしば出会います。

善西寺ではこの風習を尊いものと考え、ご門徒様方には大切に継承していただいています
もちろん会館にも葬儀用のご本尊は用意されています
でもそれは・・・「備品」なのです。
会館の職員は「今日は真宗?お大師さん?法華さん?」
葬家の宗旨にあわせて、倉庫から出して式場に掛けるだけです。

とある葬儀会館の倉庫(赤丸にご本尊が積んである)

赤丸の拡大写真。大切なご本尊も葬儀会館にとっては単なる「備品」なので、このように無造作に重ねて置かれています

住職は考えます。
「備品」を前に、どれだけ花を飾ろうが、どれだけ供物を盛ろうが、どれだけ荘厳な読経を勤めようが、どれだけ涙を流そうが、そんな葬儀は「はりぼて」にしか過ぎません
それならば「お別れ会」でよいと考えます

「のぶっつぁん」とご本尊を親しみを込めて呼び習わすこの風習
ご門徒様が護持してきたお寺の本尊の名代である「のぶっつぁん」をお迎えして、みんなで助け合って丁寧に葬儀をつとめるのです。
それは会館の「備品」を前に行う「はりぼて」のセレモニーとはその意義が全く異なります。
そして、この尊い風習によって葬儀を勤めることの本当の意義を伝えることが可能になると考えます

また、善西寺では納棺時には「納棺尊号」を胸元に入れていただくことも継承していただいています。
納棺尊号(のうかんそんごう)とは、お棺の中に「南無阿弥陀仏」と書かれた紙を納めることを指します。
これは、阿弥陀如来を礼拝対象とする浄土真宗の教えに基づき、出棺後や火葬場など、ご本尊がない状況でも、礼拝の対象を確保するためのものです。

10年前の前住職の葬儀の時も納棺後、遺体の胸元に「納棺尊号」(赤丸)を納めて葬儀を執り行いました。

拙寺の「納棺尊号」、前住職は自ら墨書していました。

私たちが家族を亡くすという悲しみの中、手を合わすということの意味に気づく学びとなります
詳細は「納棺尊号のしおり」でお伝えいたします。

拙寺「納棺尊号のしおり」

葬儀は尊いご仏縁。
愛別離苦の中の気づきは現代において大切な機縁となります
大切なことはひとつずつ、丁寧に、わかりやすくお伝えせねばといつもこころに留めています。

ごえんさん

ごえんさん

走井山善西寺第十五世住職。生命科学の研究者が尊いご仏縁により僧侶に転身。

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